ストーリーテリングを活用したマーケティング戦略

ストーリーテリング記事_アイキャッチ SNSマーケティング
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1. はじめに

現代のマーケティングにおいて、単なる商品・サービスの訴求だけでは消費者の心を動かすことは難しくなっています。情報があふれる時代だからこそ、人々の記憶に残るためには「感情に訴えかけるストーリー」が必要です。本記事では、ストーリーテリングの基本や具体的な活用法、成功のポイントを解説します。

2. ストーリーテリングとは

ストーリーテリングのイメージ

ストーリーテリングの定義

ストーリーテリングとは、商品やサービス、企業の価値を物語や体験談を通じて印象的に伝える手法です。2012年頃からコンテンツマーケティングに取り入れられ始め、現在では多くの企業が活用しています。単なる情報提供ではなく、聞き手の感情に訴えかけ、共感を生むことを目的としています。

ストーリーテリングの主な特徴は以下のとおりです。

  • 感情に訴えかける:論理的な説明よりも、共感を引き出すことに重点を置く
  • 記憶に残りやすい:物語形式にすることで情報が記憶に定着しやすい
  • 興味を引きやすい:ストーリー性のあるコンテンツは視聴者の関心を集めやすい
  • 拡散性が高い:感動や共感を呼ぶストーリーは、人々に共有されやすい

成功事例

1. レッドブル:ブランドの世界観を作り出す

ストーリーの内容

レッドブルは「翼を授ける(Gives You Wings)」というキャッチコピーのもと、単なるエナジードリンクではなく、冒険・挑戦・限界突破を象徴するブランドへと成長しました。

ストーリーテリングの手法
  • スポーツとエクストリーム活動の支援
    • F1チーム「レッドブル・レーシング」や、モトクロス・スカイダイビングなどのイベントを積極的に支援。
    • 競技者が夢を追い、限界に挑む姿を通じて、「レッドブル=挑戦の象徴」というブランドイメージを確立。
  • 伝説的なマーケティング施策
    • 2012年、宇宙からのスカイダイブ「レッドブル・ストラトス」を実施。
    • フェリックス・バウムガートナーが成層圏(約39,000m)から自由落下し、超音速で地上に降下するという壮大な挑戦を世界中に発信。
    • これにより、レッドブルのブランドイメージは「エナジードリンクを超えた、限界を超える象徴」として確立された。

2. JT(日本たばこ産業):企業の理念を伝える

ストーリーの内容

JTは「ひとのときを、想う。」というキャッチコピーを掲げ、たばこを吸う人・吸わない人の両者が共存できる社会を描くストーリーテリングを展開。

ストーリーテリングの手法
  • 喫煙者の配慮を描くCM
    • たばこを吸う人が、周囲に気を配るシーンを描く。
    • 例:「喫煙所で静かに一服しながら、考え事をするビジネスマン」など、たばこを吸うことが単なる習慣ではなく、人間らしいひとときであることを表現。
  • 「想う」ことをテーマにした広告展開
    • 「ひとのときを、想う。」というメッセージを一貫して使用。
    • たばこを吸う人と吸わない人の共存を考える、という社会的な視点を持たせることで、企業としての責任感をアピール。

3. Amazon:「便利さ」ではなく「幸せな生活」を伝える

ストーリーの内容

Amazonは、単なるECサイトではなく、「Amazonがあることで豊かになる生活」をストーリーテリングの軸に据えています。

ストーリーテリングの手法
  • 感情を揺さぶるCM展開
    • 例:小さな子どもが怖がる犬にAmazonでライオンのたてがみを購入し、犬が家族に受け入れられるようになるストーリー。
    • 例:祖父が孫に会いに行くために、Amazonでオンライン英会話教材を購入して英語を学ぶストーリー。
  • 「Amazonがあることで生まれる幸せな瞬間」を強調
    • 配送スピードや品揃えの豊富さではなく、「Amazonを使うことで、心温まる体験が生まれる」というストーリーを作る。
    • これにより、単なるECサイトではなく、人々の生活に寄り添う存在であることを印象づける。

成功事例の共通点

  1. 商品・サービスの機能ではなく、ストーリーを通じてブランド価値を伝えている
  2. 消費者の感情を動かし、共感を生む物語を作っている
  3. ストーリーが消費者にとって「自分ごと」になりやすい
  4. ブランドの一貫した世界観を持ち、長期的にメッセージを発信している

ストーリーテリングは、単なる広告ではなく、ブランドの哲学や価値観を消費者に届けるための強力な手法です。あなたのマーケティング戦略にも、こうしたストーリーの要素を取り入れてみてはいかがでしょうか?

3. ストーリーテリングの基本要素

ストーリーテリングを活用する際には、物語を構成する基本的な要素を理解することが重要です。マーケティングにおけるストーリーテリングも、映画や小説と同じように「キャラクター」「設定」「プロット」「コンフリクト」「解決」の要素を持っています。それぞれの役割と効果について詳しく見ていきましょう。

ストーリーの基本要素のイメージ

1. キャラクター(主人公)

ストーリーの中心となる存在

マーケティングにおいて、主人公は 顧客自身 であることが多く、彼らが直面する課題や変化のプロセスを描くことが重要です。企業やブランドそのものが主人公になる場合もありますが、成功するストーリーは常に「共感できるキャラクター」が描かれています。

ポイント

  • 商品やサービスを通じて成長や変化を遂げる存在であること
  • ターゲット顧客が共感できるキャラクター設定(同じ悩みや願望を持っている)
  • ブランドの理念を体現する存在

事例
🎬 Nike:「Just Do It」のキャンペーンでは、トップアスリートだけでなく、普通の人々が挑戦する姿を描き、顧客自身が主人公になれるようなメッセージを発信。


2. 設定(背景)

物語の舞台や状況を決める

ストーリーの世界観を構築するためには、どんな環境で主人公が動いているのかを明確にする必要があります。

ポイント

  • 主人公がどんな状況にいるのかを明確にする(ビフォー・アフターを伝えやすくする)
  • 消費者の生活や価値観に合った背景設定をする
  • ブランドの世界観やストーリーのリアリティを高める

事例
📦 Amazon:「家族の絆」をテーマにしたCMでは、主人公の暮らしの中でAmazonがどのように役立つのかを具体的に描くことで、消費者の実生活にAmazonを結びつけている。


3. プロット(展開)

物語の流れやストーリー構成

ストーリーには 起承転結三幕構成(序盤・中盤・終盤) などの基本的な流れがあります。消費者が共感しやすく、興味を持ってもらうためには、ストーリーの展開がスムーズであることが重要です。

ポイント

  • 序盤:主人公と状況を説明し、視聴者を物語に引き込む
  • 中盤:課題や困難が明確になり、解決への道のりが始まる
  • 終盤:問題が解決し、主人公が成長・変化する

事例
🚗 Tesla:「持続可能な未来を創る」というビジョンのもと、電気自動車の利便性や環境負荷の低減を語るストーリーを展開。最初は疑問や課題(航続距離、充電問題)を提示し、それを解決する形でブランドの価値を伝えている。


4. コンフリクト(課題・障害)

乗り越えるべき壁や試練

消費者が感情移入しやすくするためには、主人公が直面する課題をしっかり描くことが重要です。課題があるからこそ、解決したときの変化が印象的になります。

ポイント

  • 主人公が解決しようとしている問題を明確にする
  • 乗り越えるべき試練を用意し、ドラマチックな展開を作る
  • 顧客が共感できる「よくある悩み」を設定する

事例
🛍 IKEA:「家族の暮らしをより快適にする」というメッセージを伝えるCMでは、忙しい親が子どもと過ごす時間がないという課題を提示し、IKEAの家具がその解決に役立つというストーリーを展開。


5. 解決(結末)

主人公が成長し、課題を乗り越える

ストーリーの最後には、課題が解決され、主人公が変化する姿を描きます。この ビフォー・アフター のコントラストを明確にすることで、商品の価値がより伝わりやすくなります。

ポイント

  • 主人公の成長や変化を描く(購入後の未来を想像しやすくする)
  • 課題解決の結果としてブランドの価値が自然に伝わるようにする
  • 視聴者が「この商品を使えば、同じように良い変化が起きる」と思えるストーリーにする

事例
💻 Apple:「Think Different」キャンペーンでは、型にはまらない革新的な考え方を持つ人々を描き、Apple製品を使うことで世界を変える力が得られるというメッセージを発信。

まとめ:ストーリーテリングの基本要素の活用方法

要素ポイント成功事例
キャラクター(主人公)顧客が共感できる人物Nike(挑戦するすべての人々)
設定(背景)物語の舞台や状況を明確にAmazon(家族の暮らし)
プロット(展開)起承転結を意識して構成Tesla(課題提示→解決)
コンフリクト(課題)乗り越えるべき試練を設定IKEA(家族の時間の不足)
解決(結末)成長・変化を描きブランド価値を伝えるApple(Think Different)

4. ストーリーテリングの実践方法

ストーリーを考える人のイメージ

ストーリーテリングをマーケティングに活用するには、単に物語を作るだけでなく、 目的・ターゲット・構成・感情・ビジュアル・フィードバック など、戦略的なプロセスが必要です。本章では、ストーリーテリングを実践するための具体的な手順を解説します。

1. 目的の明確化

まず、ストーリーを通じて 何を伝えたいのか、どのような行動を促したいのか を明確にすることが重要です。目的が曖昧なストーリーは、視聴者に伝わりにくく、マーケティング効果も低くなります。

考えるべきポイント

  • ブランドのメッセージを伝えるのか?(例:「環境に優しい製品で社会に貢献」)
  • 特定の行動を促すのか?(例:「無料トライアルに申し込んでもらう」)
  • ブランドの価値観を共感させるのか?(例:「多様性を大切にする企業文化を発信」)

事例:Patagonia
アウトドアブランドのPatagoniaは、「消費を促す」のではなく「環境保護への意識を高める」という目的でストーリーテリングを展開。環境保護活動のドキュメンタリーを通じて、ブランドの価値を伝えている。


2. ターゲット層の理解

ストーリーを届ける相手(ターゲット)が誰なのかを明確にし、 彼らの心理や行動パターンを分析 することが重要です。ペルソナを作成し、共感しやすいストーリーを構築しましょう。

考えるべきポイント

  • ターゲットの価値観やライフスタイル(例:「ミレニアル世代はSNSを重視する」)
  • 悩みや課題は何か?(例:「育児中の親は時間がない」)
  • どんなストーリーに感情移入しやすいか?(例:「自分と似た経験をした主人公」)

事例:Doveの「リアルビューティーキャンペーン」
Doveは「本物の美しさ」をテーマにし、 一般女性のリアルな姿を描いたストーリー でターゲットに共感を生んだ。


3. ストーリーの構造設計

ストーリーは 「導入 → 展開 → クライマックス → 結末」 の流れを意識して組み立てることが重要です。

構成要素内容例:NikeのCM「Just Do It」
導入(Beginning)主人公と背景を紹介運動が苦手な人が、挑戦を決意
展開(Middle)主人公が直面する課題や困難途中で挫折しそうになる
クライマックス(Climax)商品・サービスによる解決のきっかけNikeのシューズが助け、もう一度立ち上がる
結末(End)主人公が成長し、メッセージを伝える成功をつかみ、「Just Do It」のメッセージ

事例:Airbnbの「Belong Anywhere」
Airbnbは「旅行者の新しい体験」をストーリーにし、 異文化に触れ、現地の人々とつながる価値 を訴求するストーリーを展開。


4. 感情的要素の組み込み

ストーリーに 感情を動かす要素を入れる ことで、視聴者の記憶に残りやすくなります。喜び、驚き、悲しみなどの感情を取り入れることで、ストーリーはより強い影響を与えます。

考えるべきポイント

  • 喜び:「成功をつかむ瞬間を描く」
  • 驚き:「意外な展開を入れる」
  • 悲しみ:「課題をリアルに描写する」
  • 決意:「困難を乗り越える力を示す」

事例:Google「Dear Sophie」
Google ChromeのCMでは、 父親が娘の成長記録をGmailに送る というストーリーで視聴者の感情を揺さぶった。


5. ビジュアル要素の追加

ストーリーを強化するために 動画、画像、インフォグラフィック などの 視覚的要素を活用 すると、より伝わりやすくなります。

考えるべきポイント

  • ブランドの色やデザインを統一(例:「Coca-Colaの赤と白」)
  • 映像や写真を活用し、視覚的にストーリーを伝える(例:「Appleのシンプルな広告」)
  • 視聴者の記憶に残るビジュアルを作る(例:「レッドブルのエクストリーム映像」)

事例:Instagramの広告戦略
Instagramの企業広告では、 短い動画やストーリー機能を活用し、視覚的にブランドメッセージを伝える 手法が多く使われる。


6. フィードバックの活用

ストーリーを発信した後は、 視聴者の反応を分析し、改善を加える ことが大切です。顧客の声を理解し、次のストーリーに反映させましょう。

考えるべきポイント

  • SNSのコメントやシェア数を分析(どんな反応が多かったか?)
  • アンケートやレビューを活用し、ストーリーの改善点を探る
  • データを活用し、次のキャンペーンに活かす

事例:Netflixのコンテンツ戦略
Netflixは 視聴データを分析し、視聴者が求めるストーリーを制作。フィードバックをもとに、次々と人気コンテンツを生み出している。

5. まとめ

ストーリーテリングは、単なる商品PRではなく、顧客の共感を生み、ブランドの価値を深く伝える強力な手法です。本記事で紹介した構築方法や実践ステップを活用し、自社のマーケティングに取り入れてみてください。感情を動かすストーリーは、人の記憶に残り、行動を促します。ぜひ、あなたのブランドならではのストーリーを作り上げ、顧客との強い絆を築いてください。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

ファーストテンプル代表

株式会社ファーストテンプル代表取締役。これまで100社を超えるメーカーの支援を行い、BtoCマーケティングのプロフェッショナルとして会社を設立。

これまでに多くの企業をマーケティングを通して成長させて、多くのブランドを誰もがしるブランドに。化粧品検定2級、薬機法管理者資格を所有。

▼実績
・上場企業の新規ブランドの立ち上げに携わり、新規顧客を立ち上げから6ヶ月で20万件近く獲得しベストコスメブランドに
・Instagramのメーカーアカウントを4500フォロワー→10万に引き上げ、それに合わせてSNSキャンペーン等を多くを手掛け、ドラックストアの定番ブランドになる過程を伴走支援

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