「値上げしても売れる」マーケティング戦略とは?

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1. 値上げ戦略はなぜ必要?

企業が価格改定を迫られる背景

企業が値上げを決断せざるを得ない代表的な理由には、以下のようなものがあります。

  1. 原材料コストの上昇
    • 世界的な原材料価格の高騰: 世界経済の活性化や需給バランスの変化に伴って、穀物・金属など多くの原材料価格が上昇。
    • 気候変動による農作物の減産: 異常気象や災害により農作物の収量が減り、原材料の調達コストが高騰。
  2. エネルギー価格の上昇
    • ロシアのウクライナ侵攻による影響: 地政学的リスクの高まりが石油・天然ガスなどの価格を押し上げる。
    • 国際的なエネルギー価格の高騰: 世界的な需要増や産油国の生産調整などにより、燃料費・物流費が上昇。
  3. 円安の進行
    • 輸入品の価格上昇: 為替レートが円安に振れると、海外からの輸入原材料・製品のコストが増大。
  4. 需要と供給のアンバランス
    • 企業業績の改善に伴う需要増加: 景気が上向いて生産や消費が増えると、資材や部品の需要も高まり、価格が上がる。
    • 包装・資材の価格上昇: オイル由来のプラスチック資材や紙資源の価格高騰などが製品コストを押し上げる。

こうした要因の重なりにより、企業のコストが総合的に増加。利益を維持し、サービスや製品の品質を保つためには、値上げという選択が不可欠になるケースが増えています。

価格戦略に悩む人のイラスト

値上げを躊躇する心理的要因

一方で、企業側は「値上げ=顧客離れ」というリスクを考慮せざるを得ず、値上げを躊躇しがちです。具体的には以下の心理的要因が挙げられます。

  1. 顧客の反発や離脱リスクへの恐れ
    • 価格の上昇は、消費者の購買意欲を低下させるのではないか、という不安。
    • 顧客満足度やロイヤルティが損なわれる懸念。
  2. ブランドイメージへの影響
    • 値上げが「高級化路線」などポジティブに受け止められる場合もあるが、安易な値上げはブランド価値を損なう恐れがある。
  3. 競合他社との比較
    • 同業他社が価格を据え置きしている場合、値上げによる競争力低下を懸念。
  4. 価格改定のタイミング難
    • 経済情勢や消費者心理の変化を見極めるのが難しく、誤ったタイミングでの値上げは売上減少に直結。

2. 「値上げしても売れる」ための前提条件

値上げを成功させるには、単に価格を上げるだけでは足りません。顧客に十分な価値を提供し、納得してもらうための前提条件を整える必要があります。


1. 正しいターゲット設定

  • 商品の価値を認めてくれる適切な顧客層を明確にする
    値上げが可能かどうかは、そもそも「誰に売るのか?」で大きく変わります。価格に見合った価値を感じられるターゲット層にこそアプローチするべきです。

2. 顧客ニーズの深い理解

  • ターゲットの本質的な悩みや欲求を把握する
    機能や価格だけでなく、どんな理想や体験を求めているのかを理解することで、値上げしても購入してくれる確率が高まります。

3. 価値の明確な訴求

  • 商品の価値を“納得感”を持って伝える
    「この商品を選ぶことで、どんなメリットが得られるのか?」を具体的に示すことが不可欠です。数値的な証拠や事例など、根拠を伴う説明が有効です。

4. ストーリーの構築

  • 価格に見合った価値を感じてもらうための物語を作る
    商品開発の背景や企業の理念、社会への貢献などを物語として伝えると、機能面だけではない“意味的価値”を感じてもらいやすくなります。

顧客が感じる価値とは

顧客価値は以下のような複数の要素で構成されます。

価値の種類主な内容・例
機能的価値– 商品・サービスの基本的な機能- 品質や効率性- 価格面など
意味的価値– デザインや新規性- 娯楽性などの感覚的な価値- 社会貢献・利他性など
情緒的価値– ブランドへの愛着・共感- ストーリーへの感情移入- 感情的なつながり・思い入れ
行動的価値– 継続利用のしやすさ- 顧客ロイヤルティの形成- 他者への推奨意欲(口コミ・紹介)

顧客が「この商品なら値上げしても買いたい」と思うのは、機能的な満足度だけでなく、企業やブランドの理念、社会との向き合い方なども含めて“意味的・情緒的・行動的”な価値を感じられるからです。


価格以外の“付加価値”に目を向ける重要性

価格を上げるには、それに見合うプラスアルファの価値を提供することが不可欠です。以下のようなアプローチを検討しましょう。

  1. ブランド体験の提供
    • 商品やサービスの機能だけでなく、購入前後の体験全体を通じて「付加価値」を感じてもらう。
  2. 独自性の創出
    • 新規性や娯楽性、限定感など、他ブランドとは違う「ここでしか得られない」要素を打ち出す。
  3. コミュニティの形成
    • 顧客同士が繋がる場を提供したり、スタッフと交流できる仕組みを作ったりすることで、ブランドへの愛着を高める。
  4. 企業の社会的責任(CSR)の明確化
    • 環境配慮や地域貢献など、社会との向き合い方が明確な企業は、消費者からの支持を得やすい。
  5. パッケージや販売方法の工夫
    • 商品自体を変えなくても、デザインや限定販売などで特別感を演出することで、顧客の満足度と納得度を高める。

3. 値上げ戦略の考え方:顧客が納得するポイント

値上げを成功させるには、価格と価値のバランスを適切に設計し、顧客に納得してもらうことが不可欠です。単なる価格競争ではなく、「なぜこの価格なのか?」を伝えられる戦略が重要になります。

1. 価格×価値のバランスを考える

顧客が「この価格でも買う価値がある」と感じるには、価格以上の価値を提供することが必要です。
たとえば、ハイシーズンの商品は高くても売れやすく、砂漠での水は通常より高い価格でも納得されるように、価値の感じ方は状況や心理で変わることを意識しましょう。

2. 競合との差別化を明確にする

価格を上げるなら、競合との差別化が必須です。単なる値上げではなく、ブランドの強みや独自の付加価値を打ち出すことが重要になります。
特に、ダイナミックプライシング(需要に応じた価格変動)やパーソナルプライシング(顧客ごとの価格最適化)を活用すると、無理のない価格改定が可能です。

3. 価格以外の付加価値を強化する

価格を上げても顧客が離れないためには、価格以外の魅力を高めることが鍵になります。
例えば、

  • 体験価値の向上(購入時の特別感、限定感)
  • ブランドストーリーの強化(共感や愛着を持たせる)
  • アフターサービスの充実(安心感を提供)
    といった施策を通じて、価格に見合った満足度を提供することが大切です。

4. 値上げ準備のステップ

値上げをスムーズに進めるためには、市場分析・社内承認・顧客対応・実施後の評価といった段階的なプロセスが必要です。慎重に進めることで、顧客の信頼を維持しながら持続可能な価格戦略を実現できます。

1. 市場分析と価格設定の見直し

まず、現在の市場環境や競合の価格戦略を分析し、値上げが市場に与える影響を評価します。コスト増加の要因を明確にし、新しい価格設定の根拠を確立することが重要です。

2. 社内承認プロセス

値上げの理由や戦略を社内で共有し、関係部門の承認を得ます。透明性を持った意思決定を行うことで、社内外への説明責任を果たし、スムーズな実施を可能にします。

3. 顧客コミュニケーション戦略の策定

値上げを受け入れてもらうためには、適切な伝え方とタイミングが鍵になります。

  • 値上げの1~2か月前には、事前アナウンスを実施。
  • 値上げの理由を明確にし、顧客が納得できるように説明。
  • FAQやカスタマーサポートを強化し、疑問や不安を解消。

4. 実施と顧客フォロー

設定した期日から新価格を適用し、顧客からの反応を慎重にモニタリング。価格変更後も、丁寧なフォローアップを行うことで、取引関係を円滑に維持します。

5. 評価と調整

値上げの影響を分析し、必要に応じて価格戦略を調整。市場調査や顧客のフィードバックを活用しながら、長期的な売上と顧客満足のバランスを保ちます。

価格情報準備プロセスの図解

5. 実際の値上げ成功事例から学ぶ

1. 値上げで顧客満足度を向上させたケース

CoCo壱番屋(ココイチ):高付加価値化で売上増加
CoCo壱番屋は4回の値上げを実施しながらも売上を伸ばしました。成功のポイントは、期間限定メニューの導入や「ちょっとした贅沢感」の演出にありました。例えば、スパイスカレーなどの特別メニューを設定し、通常メニューより少し高い価格を提示することで、「高品質だけど手の届く贅沢」という印象を与えました。

マクドナルド:ブランドイメージの刷新で成功
マクドナルドは、4度の値上げ後も過去最高の売上と利益を記録。成功の要因は、「ファストフード」から「居場所」へのブランドイメージの転換や、「平成バーガー」シリーズで世代を超えた共感を生んだことにあります。また、「エモい」をキーワードにした広告展開により、感情に訴えるマーケティングを強化しました。


2. 段階的な値上げ戦略の重要性

値上げによる反発を抑えるため、新メニューや期間限定メニューで先行的に値上げし、その後定番メニューの価格を上げる方法が有効です。顧客が新しい価格に慣れる時間を作ることで、抵抗感を和らげることができます。


3. 付加価値の明確化が鍵

顧客が納得できる価格設定のためには、単なる値上げではなく、付加価値を示すことが重要です。例えば、食材の産地や品質を明示したり、サービスの質を向上させたりすることで、価格以上の価値を感じてもらうことができます。


4. 失敗例との比較でわかるポイント

  • 単なる値上げではなく、顧客が納得できる価値を提供することが必須
  • 段階的な値上げを行い、価格への抵抗感を少しずつ減らす
  • ブランドイメージの刷新や顧客体験の向上と組み合わせることで、むしろ満足度を高めることが可能
会議をしている人のイメージ

6. 最後に

値上げは企業にとって避けられない決断です。ただ、適切な戦略を取ることで、顧客の納得感を高め、むしろブランド価値を向上させるチャンスにもなります。

大切なのは、価格と価値のバランスを見極め、顧客にとって納得のいくストーリーを持たせること。単なるコスト増への対応ではなく、付加価値をどう伝え、体験として提供できるかを考えることで、価格以上の満足を生み出すことができます。

今回の内容が、貴社の価格戦略を見直すヒントになれば幸いです。価格改定に向けた具体的な施策や実行方法についてお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

ファーストテンプル代表

株式会社ファーストテンプル代表取締役。これまで100社を超えるメーカーの支援を行い、BtoCマーケティングのプロフェッショナルとして会社を設立。

これまでに多くの企業をマーケティングを通して成長させて、多くのブランドを誰もがしるブランドに。化粧品検定2級、薬機法管理者資格を所有。

▼実績
・上場企業の新規ブランドの立ち上げに携わり、新規顧客を立ち上げから6ヶ月で20万件近く獲得しベストコスメブランドに
・Instagramのメーカーアカウントを4500フォロワー→10万に引き上げ、それに合わせてSNSキャンペーン等を多くを手掛け、ドラックストアの定番ブランドになる過程を伴走支援

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